シフト管理と勤怠管理を別々のツール(Excel、紙、異なるシステムなど)で運用している企業は少なくありません。しかし、その「分離」こそが、データの二重入力、給与計算のミス、そして見えない残業の発生という非効率と法令違反のリスクを生んでいます。
この課題を認識した企業は、「シフト作成→打刻→勤怠集計→給与計算」のプロセスをシームレスにつなぐ、一体型システムを探しているはずです。
本記事では、このシフト管理・勤怠管理一体型システムを選ぶ際に不可欠な3つの必須要件と、導入によって実現できる労務管理の「予実管理」について解説します。
「シフト管理・勤怠管理一体型システム」導入のメリットとデメリット
シフト管理と勤怠管理が統合されたシステムを導入することで、得られる効果と、事前に把握しておくべき留意点があります。特に、工数削減や法令遵守において大きな効果を得られる一方で、導入コストや初期設定の複雑さといった留意点は事前に確認しておく必要があります。
シフト管理・勤怠管理一体型システムのメリット
工数削減とミスの根絶
シフトデータが勤怠集計に自動で連携されるため、手動によるデータ転記や集計、確認作業が不要になり、工数が激減します。正確な予実管理
シフト(予定)と実際の打刻(実績)を自動で比較できるため、予期せぬ残業や人件費の超過をリアルタイムで把握し、迅速な対策が可能になります。法令遵守の強化
シフト作成段階から勤怠集計まで、一貫したルールで労働基準法違反(休憩なし、残業上限超過など)をチェックできるため、労務リスクを最小限に抑えられます。
シフト管理・勤怠管理一体型システムのデメリット
コストの増加
シフト専門のツールに比べ、機能が多岐にわたるため、月額費用や初期設定費用が高くなる傾向があります。複雑な初期設定
シフトのルールだけでなく、勤怠の打刻方法、各種計算ロジックの設定も必要になるため、導入時の設定工数は分離型システムより大きくなります。現場への教育
管理者だけでなく、全従業員が打刻や申請にシステムを利用するため、従業員への操作教育が必須となります。
「シフト管理・勤怠管理一体型システム」の必要がないケース
以下のケースに該当する場合、無理に一体型システムを導入するよりも、既存の勤怠管理システムの活用や、シフト管理専門の特化型システムの検討が効率的です。
現在の勤怠管理システムに満足している場合
既に高機能な勤怠システムがあり、給与計算連携もスムーズに行えているなら、そのシステムを最大限に活用し、シフト作成のみをアウトソーシングする選択肢もあります。固定勤務者がほとんどの場合
従業員の勤務時間がほぼ固定(例:9時-18時)で、シフトの概念が存在しない企業では、シフト管理機能は不要です。予算が非常に限られている場合
一体型システムは機能が豊富である分、コストが高くなりがちです。コスト最優先で、最低限の法令遵守だけを目指す場合は、分離型の組み合わせも選択肢に入ります。
「シフト管理・勤怠管理一体型システム」の向き・不向き
一体型システムの導入は、企業が現在抱える課題によって、費用対効果が大きく変わります。自社の組織規模、業態、労務管理の複雑さに照らして、最適な選択であるかを検討しましょう。
一体型システムが向いている企業
「非効率な手作業に疲弊しており、コストをかけてでも労務管理を根本から改善したい」と考えている企業は、一体型システムによるメリットを最大限に享受できます。
現場の複雑なシフトと正確な人件費管理を両立させたい企業。
現在、シフトデータと勤怠データの手動転記に多大な時間がかかっている企業。
残業時間の予実差異をリアルタイムで把握し、コンプライアンスを強化したい企業。
勤怠管理システムを新たに導入、またはシステム全体を刷新する予定の企業。
一体型システムが向いていない企業
「現在の勤怠管理システムに満足している」「最小限のコストでシフト作成だけを効率化したい」といったニーズを持つ企業は、一体型システム以外の選択肢も検討すべきです。
コスト最優先で、シフト作成機能だけが欲しい企業。
既に機能も費用も満足している勤怠管理システムがあり、シフト機能のみを単体で追加したい企業。
従業員数が少なく、紙やExcelで管理しても大きな負担になっていない企業。
【必須要件1】手作業を根絶する「シームレスなデータ連携」
シフトと勤怠を一体化する最大の目的は、人の手を介した転記作業と入力ミスを完全に排除することです。データが自動で流れる仕組みが、業務効率化の生命線となります。このシームレスな連携こそが、月末月初に集中する残業や集計ストレスから担当者を解放し、シフト管理者本来の「戦略的な業務」に集中できる環境を創出します。
課題 | 必須機能とシステムのチェックポイント |
集計・転記の手間 | 自動データ連携 シフトデータ(予定時間)が勤怠データ(実績時間)の集計ベースとして自動で連携されるか。 |
多様な働き方への対応 | 柔軟な打刻方法 従業員が利用しやすいよう、スマートフォン、PC、ICカード、生体認証など、複数の打刻方法に対応しているか。 |
給与計算のミス | 外部システム連携 確定した勤怠データが、現在利用している給与計算システムへエラーなくスムーズに連携(APIまたはCSV)できるか。 |
【必須要件2】経営リスクを回避する「正確な予実管理とコンプライアンス」
シフト(予定)と勤怠(実績)が連携することで、「誰が、いつ、シフトから逸脱したか」をリアルタイムで把握できるようになります。これは、労務コンプライアンス強化と人件費最適化に不可欠な機能です。この予実管理機能により、人件費予算の超過を未然に防ぎ、法令違反が手遅れになる前に警告を受けられるため、シフト担当者は精神的な負担から解放され、自信を持って労務管理を遂行できます。
課題 | 必須機能とシステムのチェックポイント |
見えない残業の発生 | 予実対比・差異アラート シフトの予定時刻と実際の打刻時刻を自動で比較し、差異(予期せぬ残業)が発生した場合に、管理者へ即座に警告する機能があるか。 |
法令違反リスク | 自動法令チェック 休憩時間の付与義務、36協定の上限、連続勤務日数など、複雑な労働基準法をシステムが自動でチェックし、シフト作成・打刻時に警告を出すか。 |
正確な集計 | 複雑な計算ロジック対応 所定外労働、深夜割増、休日出勤など、複雑な割増賃金計算ルールに正確に対応できるか。 |
予実管理機能とは
予実管理機能とは、シフト(予定)情報と、打刻によって記録された勤怠(実績)情報を自動で照合・比較し、その差異を可視化する機能です。これにより、管理者は以下のメリットを得られます。
リアルタイムな差異把握
予定外の残業や早退がいつ、誰に発生しているかを即座に把握し、是正措置を取ることができます。人件費の最適化
予定していた人件費と実績の人件費を比較できるため、費用対効果の分析や、次期シフトの最適化に役立ちます。
予実管理機能があるとよい企業の特徴
予実管理機能は、特に以下の特徴を持つ企業で、その効果を最大限に発揮します。
アルバイト/パート比率が高い企業
シフトの流動性が高いため、予実管理によって常に正確な人件費を把握し、予算超過を防ぐ必要があります。(例:小売業、飲食業)残業代の管理が複雑な企業
予定外の残業をリアルタイムで監視し、サービス残業のリスクや法令遵守を徹底したいと考えている企業。(例:コールセンター、製造業)人件費が売上を大きく左右する企業
適切な人員配置が業績に直結するため、日次や週次で人件費の予実を細かくチェックしたい企業。(例:サービス業全般)
シフト管理システムのシフティーの予実管理機能
シフティーは一体型システムではなくシフト管理専門の特化型システムですが、単なる時間管理を超え、「人件費のコスト管理ツール」として機能します。シフティーは、シフト作成時に設定した人件費予算と実績の勤怠データを自動照合し、以下の点で予実管理を強力にサポートします。
- リアルタイム人件費シミュレーション
シフト作成途中で、その月の残業見込みや人件費合計を予測表示し、月末になる前に予算調整を可能にします。 - 予算超過の視覚化とアラート
時給や割増賃金(深夜、休日など)を考慮した人件費情報と、実績の打刻時間を即時に照合。予算に対する超過額を色分けで警告し、コストコントロールを支援します。 - 複数拠点・部署の横断比較
複数店舗や部署を運営している場合、各拠点の予実達成度を一覧で比較・分析でき、経営層はコスト構造の問題点を迅速に把握できます。
【必須要件3】現場の負担を減らす「従業員のセルフサービス機能」
従業員自身がシステムの利用者となることで、管理者が対応していた問い合わせや申請の工数を削減できます。これにより、従業員は自分の勤務状況を常に把握でき、管理者は煩雑な紙のやり取りや口頭での確認業務から解放され、より重要な労務管理業務に集中できます。
課題 | 必須機能とシステムのチェックポイント |
申請・承認の手間 | ワークフロー機能 残業申請、有給休暇申請、シフト変更依頼など、全ての申請・承認がシステム内で完結し、履歴が残るか。 |
シフトの周知徹底 | モバイル対応(アプリの提供) 専用アプリを通じて従業員が確定シフトをいつでも確認できるほか、緊急連絡やヘルプ募集をシステムから一斉通知できるか。プッシュ通知により、シフト変更や承認状況の周知漏れを防ぐことも重要です。 |
打刻漏れ | 自己修正機能 従業員自身が打刻履歴を確認・修正依頼できる機能があり、管理者の承認を経てデータが確定する仕組みになっているか。 |
一体型システム導入か、シフティー導入か?最適な選択をするための基準
シフト管理と勤怠管理の効率化を目指す企業にとって、システム選びは経営判断の一つです。最後に、一体型システムとシフティーのようなシフト特化型システム、どちらを選ぶべきか迷っている企業のための判断基準を提示します。
会社の状況 | 推奨するシステムタイプ | 理由 |
① 勤怠システムが古く、全体を刷新したい | 一体型システム | シフト作成から給与計算まで、データの流れを完全にシームレス化でき、将来的な工数削減効果が最大化します。 |
② 現在の勤怠システムに満足しているが、シフト作成が非効率 | シフティー(特化型システム) | シフティーはシフト作成・人件費予実管理に特化しており、現在の勤怠システムとAPI連携することで、コストを抑えつつ最大の効果を得られます。 |
③ 人件費の最適化と予実管理を最優先したい | シフティー(特化型システム) | シフティーのような特化型は、シフト作成と予実管理の機能が一体型システムよりも優れているケースが多く、戦略的な人員配置に役立ちます。 |
今回解説した「シームレスなデータ連携」「正確な予実管理」「従業員のセルフサービス機能」という3つの必須要件を念頭に置き、自社の現状と目的に合った最適なソリューションを選択してください。