シフト作成の基本

エクセルシフト表で勤務時間を自動計算!日跨ぎ・休憩控除に対応する数式テンプレート

「シフト表の勤務時間集計に毎週時間がかかりすぎる」「日をまたぐ勤務や休憩時間の計算で、必ずミスが発生する」— エクセルでシフト管理をしている担当者にとって、勤務時間計算は最も手間がかかり、かつミスが許されない作業です。

手動での時間計算や集計は非効率なだけでなく、給与計算ミスや法令違反のリスクを常に生み出します。

この記事では、エクセルシフト表に勤務時間を入力するだけで、休憩控除や日跨ぎ勤務に対応した実働時間が自動計算される数式テンプレートを解説します。

第1章:自動計算を実現する「3つの必須テクニック」

勤務時間計算を自動化するには、エクセルの時間表記(シリアル値)の特性を理解した数式が必要です。ここでは、特に手動計算でミスが生じやすい「日跨ぎ」「休憩控除」「週の集計」に対応する、実務に役立つ数式テクニックを解説します。

テクニック1:日をまたぐ勤務時間を正確に計算する数式

深夜や夜勤のシフトがある職場では、勤務開始時刻が前日、終了時刻が翌日になる「日跨ぎ勤務」が頻繁に発生します。この場合、Excelで単純に引き算を行うだけでは計算が狂ってしまいます。 正確な労働時間を把握するために、必ず日をまたいだ場合の補正処理を行いましょう。

  • 課題
    22:00〜翌6:00のような日跨ぎ勤務を単純に引き算すると、Excelの時間表記の仕組み上、マイナス表示になってしまい、正しく計算できません。

  • 解決策
    勤務終了時間から開始時間を引き、もしマイナスになったら「1日(24時間)」を加算するIF関数を使って補正します。このテクニックで、日をまたぐ勤務でも正確な総労働時間が算出できます。

コピペできる数式の例 (日跨ぎ対応)

以下のセルにデータが入っていると仮定します。

セル内容
A2勤務開始時刻(例: 22:00
B2勤務終了時刻(例: 6:00
C2総労働時間(時間表記)

C2 に入力する数式:

=B2-A2+(A2>B2)

数式の解説:

  • B2-A2 :  単純な引き算。日をまたがない場合はこれでOK。

  • +(A2>B2) :  A2(開始)がB2(終了)より大きい(日をまたいでいる)場合、TRUE(数値の1)が返され、1日(24時間)が加算されます。日をまたがない場合はFALSE(数値の0)が加算されます。

  • (オプション:実数時間への変換) :  時給計算に使う場合は、この結果に * 24 を乗算してください。

テクニック2:労働時間に応じて「休憩時間」を自動控除する仕組み

従業員に与える休憩時間は、労働基準法によって実労働時間に応じて義務付けられています。この休憩時間の控除を従業員ごとに手動で行っていると、法令違反や計算ミスのリスクが高まります。 シフト時間が確定したら、休憩時間が自動的に差し引かれる仕組みが必要です。

  • 課題
    労働基準法に基づき、6時間超で45分、8時間超で1時間など、勤務時間に応じて休憩時間を自動で差し引く必要がある。

  • 解決策
    IF
    関数を使って総労働時間を判定し、条件に応じて休憩時間(時間表記ではなく実数、例:45分なら45/1440)を控除する数式を組み込みます。休憩時間の控除は法令遵守の基本です。

コピペできる数式の例 (休憩自動控除)

以下のセルにデータが入っていると仮定します。

セル内容
C2総労働時間(時間表記) ※テクニック1で算出した値
D2実働時間(休憩控除後)

D2 に入力する数式:

=C2 - IF(C2>(8/24), 60/1440, IF(C2>(6/24), 45/1440, 0))

数式の解説:

  • 60/144045/1440 :  60分や45分をExcelの時間表記(シリアル値)に変換しています。(1日は1440分)。

  • IF(C2>(8/24), 60/1440, ...) :  総労働時間(C2)が8時間を超える場合、60分を控除。

  • IF(C2>(6/24), 45/1440, 0) : 8時間以下だが6時間を超える場合、45分を控除。それ以外は控除なし。

テクニック3:「週の総労働時間」を自動で集計し、チェックする

残業代の計算や、労働基準法上の週の労働時間上限(原則40時間)を超過していないかを確認するためには、スタッフごとの総労働時間の集計が不可欠です。この集計作業を手動で行うと膨大な時間がかかるため、Excelの集計関数を使い、特定の期間のデータを瞬時に合計できるように設定しましょう。

  • 課題
    残業代や社会保険の要件確認のために、スタッフごとの週や月の総労働時間を瞬時に把握したい。

  • 解決策
    SUMIFSUMPRODUCT関数を活用し、スタッフ名や期間を指定して実働時間を自動で集計する仕組みを構築します。これにより、法定時間(週40時間など)を超過していないかを即座にチェックできます。

コピペできる数式の例 (スタッフ別・期間別集計)

以下のシート構成とデータがあるものと仮定します。

【シフトシート】

セル内容
A列従業員名(例: 佐藤
B列日付(例: 12/1
C列実働時間(時間表記)

【集計シート】

セル内容
A2従業員名(例: 佐藤
B2合計実働時間

B2 に入力する数式:

=SUMIF(シフトシート!A:A, A2, シフトシート!C:C)

数式の解説:

  • SUMIF : 条件(ここでは従業員名)に一致するセルの値を合計する関数。

  • シフトシート!A:A : 検索対象(従業員名リスト)。

  • A2 : 検索条件(集計したいスタッフ名)。

  • シフトシート!C:C : 合計対象(実働時間リスト)。

  • ポイント : この結果に * 24 を乗算すれば、合計時間が実数(Decimal)で表示され、週40時間などのチェックが容易になります。

第2章:自動計算の「エクセル数式リスクと限界の基準」

複雑な自動計算数式は非常に便利ですが、同時にエクセルというツールの限界を露呈させます。

限界のサイン1:「数式崩壊」が起こり、エラーの原因が分からない

日跨ぎや休憩控除に対応する複雑な数式は、誰かがセルを誤って上書きしたり、行を挿入したりするだけで簡単に崩壊します。エラーが発生しても原因が複雑すぎて特定に時間がかかります。

  • 対処法
    数式が入力されているセルを必ず保護設定し、パスワードをかけることで、意図しない上書きを防ぎましょう。また、数式の変更履歴を管理するために、バージョン管理機能を活用することも有効です。

限界のサイン2:新しいルールへの対応に「週単位」の時間がかかる

新しい契約社員の時給体系や、休憩時間ルールの微修正が入った際、すべてのシートの数式を一から修正する必要が生じます。この修正作業が、本来の業務を圧迫します。

  • 対処法
    時給や休憩時間の基準といった「変数」は、数式に直接入力せず、必ずマスタシートから参照するように徹底しましょう。これにより、修正作業はマスタシートの一箇所で済み、修正時間を大幅に短縮できます。

致命的なミス:集計された時間が「法令違反」をしていても気づかない

Excelは正確な時間を計算できても、「その時間が法令上正しいか」までは自動で判定できません。連続勤務日数や法定休日などの「時間以外の違反」は、手動での確認が必須となり、重大な見落としリスクを抱えます。

  • 対処法
    「連続勤務日数」や「週の休日数」を自動でカウントする専用のチェック欄をシフト表の横に作成しましょう。そして、条件付き書式を活用し、違反があった場合にセルが赤く表示されるよう設定することで、目視チェックの負担を減らすことができます。

第3章:数式と手計算の限界を超えて、シフト時間を管理する

もしエクセルの限界を感じたら、次のステップへ進む決断をしましょう。シフト管理システムは、複雑な日跨ぎや休憩控除のロジックを担当者が数式を組むことなく自動で処理します。入力された時間は、すべて正確な実働時間として集計されます。

シフティーは、複雑な時間計算はもちろん、法令上のチェック(連続勤務など)も自動で行います。あなたは時刻を入力するだけで、集計、チェック、給与連携まですべてが自動化されます。

  • 移行の判断基準
    複雑な時間計算の数式が崩壊した経験がある、または給与計算前の時間集計に毎週2時間以上かかっている場合は、システム導入を検討すべき時期です。

まとめ:エクセルで「粘る」ための最後のチェックリストと卒業の判断基準

エクセルの数式テクニックは、確かに手作業の限界を一時的に引き上げてくれます。しかし、その複雑な数式をメンテナンスする負荷自体が、やがて最大の負担になります。

Excelで「粘る」ためのチェックリスト

システム導入を見送る前に、まずは以下の「最後の粘り」を徹底してください。

  1.  数式保護の徹底
    複雑な数式が入力されているセルを保護設定し、意図しない上書きによる「数式崩壊」を防ぐ。
  2.  基準値のマスタ化
    時給や休憩時間のルールといった「変数」をマスタシートに集約し、修正箇所を最小限に抑える。
  3.  違反の視覚化
    条件付き書式を活用し、法定労働時間超過や連続勤務日数オーバーが赤字で表示される仕組みを作る。
  4.  限界時間の確認
    上記の「最後の粘り」をしてもなお、計算ミスや数式の修正に月3時間以上かかっているなら、それはExcelというツールが、あなたの能力を超え始めたサインです。

ミスのない正確な管理は、もはやExcelの「得意分野」ではありません。シフト作成者の貴重な時間を「数式との格闘」から解放し、本来の業務に集中できるように考え始めたタイミングで、シフト管理システム導入の検討という次のステップへ進みましょう。

その解決策として、ぜひAIによる自動シフト作成と正確な勤務時間集計を体験できるシフティーの無料トライアルをお試しください。

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